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2−4−3 エージェント
北海道の海洋土木事業者に行ったヒアリング調査では、瀬戸内地域が作業船建造に競争優位を発揮する理由の一つとして、自社では船舶の造修機能を保持しないが、コーディネート力(営業情報収集能力が高く、ユーザーニーズに立脚した技術情報を提案できる。新造発注要望に基づいて、造船所とクレーンメーカーをコーディネートする)に長けたエージェントが存在するためと考えている社もあった。
今回の瀬戸内地域調査では、こうした『瀬戸内エージェント』についてのヒアリングも行ったが、各造船所等からのヒアリングでは、現在ではそうした事業者は影を薄めているとの印象を受けた。かつては、作業船のエージェントは存在したか、個人経営規模で行っていることが多く、大手造船所などの経験者などが多かったため情報力は高かったが、いわゆる商社としての金融・リスク負担機能も乏しかったため、信用は低かったとのことであった。また、作業船市場の好況ピークは10数年前にあり、その後、造船所等を含めた淘汰が進展したため、そうしたエージェント的な小規模事業者は、現時点ではその役割・影響力を低下させているとのことであった。
しかしながら、こうしたエージェント機能として、現在では中古船の転売などブローカー的な役割を担う業者も小規模ながら登場しているようである。海洋土木事業者は、短期的な公其工事受注のために作業船の入手を急ぐことがあり、このような場合、手間をかけた新造よりむしろ急場を凌ぐ意味での中古船を物色することが多い。こうした中古船の転売等は、瀬戸内の造船所でも顧客サービスの一環として事業展開している社もあるが、転売専門のブローカーとして事業を行っている個人事業者も存在しているとのことである。
このように、かつては複数存在したエージェントは現在では、その影響力と役割を低下させてきていることが分かった。しかしながら、それは淘汰を経た現状の姿であり、依然として『造船産地(造船業、舶用工業)』としての重層的な企業群の厚みと裾野の広さを持っている。

 

 

 

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